木版画復刻「国宝孔雀明王像 世界最大級複製木版画」

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世界に認められた最高峰の木版画作品を作った日本の技術

京都仁和寺に所蔵される中国・北宋時代に作られた仏画「孔雀明王像」。畳一畳にもなるこの巨大仏画は、細やかな筆使いと多彩な色彩によって随所に装飾が描かれ、現在国宝に指定されています。

描かれてから約900年後の1904年、アメリカ・セントルイス市で開催された万国博覧会に日本の高い創作技術を披露すべく、数多くの美術工芸品が出品されました。この仏画を新たに木版画を制作する試みが、当時最高の技術を有していた日本の木版画の匠たちに託されました。

通常5〜20版ほどで作られる木版画に対し、緻密な装飾が施された「孔雀明王像」は版木43版(22枚裏表)、なんと摺りは900回(当時)を超えるという類を見ない大作となりました。
この驚愕の作品は賞賛を受け、見事に金牌を受賞し、日本文化・そして伝統木版画が世界に認められました。

約1世紀の時を経た原版版木を用いた復刻への挑戦

発表されてからおよそ一世紀の時が流れ、機械印刷が台頭する現代。伝統木版画の継承者たちは、保存されていた当時の貴重な版木を用いてその技術、作品を復刻しようと挑みました。

しかし当時の制作過程で版木は摩耗し、一部経年劣化による腐食も発生していたため、原版での複製は困難を極め、実現は不可能だと思われ、ついには幻の作品になろうとしていました。
そこで復刻へと名乗りを挙げたのが竹中清八を始めとする京都の木版職人たちでした。

1200年続く京版画で培われてきた様々な技法と、木版印刷の匠の知識と腕をもって再現を試み、さらに原画である肉筆画へと近づくために表現の研究を重ねました。
これにより細分化された摺り工程は、オリジナル制作当時の900回を大幅に超える約1400回にもなり、木版画の粋を集めた最高傑作が完成しました。

1.巨大版木に極細の彫り
一畳にもなる巨大版木に施された彫りは、22枚全てがずれのない正確さを見せる。
2.絵具を均一に広げる
細かい線を潰さぬよう丁寧に絵の具を乗せ、はっきりと浮かび上がるように余分な絵の具を払う。
3.絶妙な力加減の摺り
90年の時間経過による劣化具合を見ながら、熟練の匠の技術をもって絶妙な摺りが行われる。

規格外のサイズ、摺り数での木版画を可能にした竹中清八の技術開発

移動見当・伏せ摺り

畳一畳にもなる規格外のサイズ、かつ基軸となる見当を失った巨大版木を使った摺りは、新たな和紙の固定法「伏せ摺り」、版に合わせて見当を移動させる「移動見当」という竹中の新たな技術開発が可能にした。

「タンポ」泥摺り・ぼかし摺り

絵具を重ねて摺る京版画独特の技法に、特殊な道具「タンポ」と独自に編み出した使用法を合わせることで立体感ある表現を実現。また、仕上がりに深みを出すぼかし摺りを磨き、さらに濃淡を緻密に再現した。

概要

内容仁和寺所蔵「国宝 孔雀明王像」複製木版画原版再摺り
原版制作関西写真製版印刷合資会社(現 光村印刷株式会社)
1904年(明治37年)製
サイズタテ167cm×ヨコ102cm
仕様山桜板 43版(22枚裏表) 約1,400度摺り 10点
復刻期間およそ12ヶ月(研究・摺り) 1991年1月完成
所蔵仁和寺(京都) / 紙の博物館(東京)

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