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歌麿筆浮世絵の原版、日本で確認されている二つのうちのひとつ
喜多川歌麿筆「蹴鞠之図」は、貴重な主版の版木が発見されたことを記念して鳥取県鳥取市にある渡辺美術館より再摺りをご依頼いただきました。
柱絵として細長い形に図柄を巧みに配置した美人画は、柳の下で蹴鞠用の鞠を持つ若い女性を描かれています。歌麿の版木は他に風の博物館・歌麿館(愛媛県肱川町)、ボストン美術館(アメリカ)で1例ずつ確認されていますが、柱絵用のものは渡辺美術館の所蔵のみ。この作品の錦絵はパリのギメ美術館が所蔵しています。
歌麿の流れるように繊細で品のある線で描かれた女性の立ち姿が蘇る
版木は当時浮世絵の制作道具とみられていたため、使い終わると表面を削って別の浮世絵の原版にしたり、薪に使われたりしました。そのため、版木自体はほとんど現存しておらず貴重な発見でした。
この作品は、女性の着物や筆致などから喜多川歌麿晩年の享和年間〔1801~04〕頃に制作されたと推定されます。
日本で確認された二つの歌麿原版を摺りあげた唯一の摺師
原版を丁寧に摺りあげ現代によみがえらせたのは、竹中木版四代目摺師 竹中清八。日本で発見された喜多川歌麿作「狐釣之図」(風の博物館・歌麿館所蔵)、「蹴鞠之図」(渡辺美術館所蔵)の貴重なオリジナル版木、いずれもを摺りあげた唯一の摺師と言えます。
摺りの第一人者として摺刷技術を磨き、この他、京都仁和寺所蔵「孔雀明王像」の世界最多約1400度摺り複製木版画に挑むなどの功績が讃えられ「現代の名工」「黄綬褒章」受章。
概要
内容 | 渡辺美術館所蔵 「蹴鞠之図」版木 再摺り |
作者 | 喜多川歌麿 |
原本制作時期 | 享和年間〔1801~04〕頃 |
サイズ | 70.0×14.0×2.0(cm) |
版木 | 桜木板 |
渡辺美術館
鳥取市の医師、渡辺元が、昭和初期から60年余年に亘り収集した古美術品約3万点を収蔵する美術館。
日本を中心とした東洋の絵画や陶磁器から、仏教美術、工芸美術、民芸品にいたるまで収蔵。特に甲冑・刀剣の収蔵・展示数は国内屈指、日本各地の匠の逸品を常設で鑑賞できる。