古版木修復・新調彫り 天河大辨財天社

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日本辨財天の一之宮・大峯本宮に伝わる弁財天の古版木

奈良県吉野郡天川村にある天河大辨財天社からのご依頼で、所蔵の古版木の修復および新調彫り・摺りを行いました。

お預かりした版木は、かなり古いもので長期間にわたり頒布のために摺られており墨の膠着が見受けられました。経験豊富な彫師が、時間をかけ丁寧に墨を除去し、修復作業を行いました。その後、修復した版木を基に新たな版を制作しました。この一連の作業を通じて、古版木の価値を維持しつつ、新しい版を制作することができました。

膠着した墨と向き合う、彫師の繊細な修復技術

お預かりした「大峯天川大辨財天」の版木。全体的に墨の癒着があり、除去してみると、摩耗等による版の欠損が見受けられた

お預かりした「天河曼荼羅」の版木。こちらも長年の使用により全体的に墨の癒着が著しい。除去してみると、版の欠損箇所が何ヶ所も見受けられた

古版木を写し、線を読み解く。新たな版に、時を刻む

彫師が、墨の除去を済ませた版木で試し摺りし、版の欠損している箇所を確認する。その摺物に、御札に描かれている線を踏まえながら加筆し版下絵を作成する

欠損箇所を加筆した版下絵を基に新たな版を彫る

新調彫りした版木の摺物を基にリサイズした版木を作成。紙はA4サイズとのご指定があり、常に同じ位置に摺れるように目印の見当を入れる

線の強弱を巧みに読み取り、刀を入れる彫師

「同じ一枚」を何百回も摺り上げる、摺師の熟練の技

ご依頼いただいた授与品の御札摺り。墨の濃淡が出ないよう均一に摺り上げる

概要

内容天河大辨財天社所蔵 「古版木」修復・新調彫り・摺り
作者不明
制作時期不明
作業内容 古版木修復(墨除去)/新調彫り(現存品サイズ版・A4リサイズ版)/摺り
修復期間およそ4ヶ月(調査・修復・彫刻・摺り)
制作年2025年

大峯本宮 天河大辨財天社

奈良県吉野郡天川村にある神社。ご祭神は市杵島姫命(辨財天)、熊野権現(本地仏:阿弥陀如来)、吉野権現(蔵王権現)を祀る。神仏習合の形態を今も残しており、日本三大弁天の宗家とされている。辨財天は、音楽や芸能の神様としても知られ、毎年神前での能の奉納が行われ、世阿弥が用いたとされる阿古父尉の面や、能楽草創期からの貴重な能面、能装束が多数奉納されている

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