祇園祭の賑わいの中に蘇る 京都画壇の重鎮の筆による木版画
日本三大祭の一つ「祇園祭」で行われる山鉾巡行で、ひときわ長い列をなして独特の形の鉾を掲げるのが綾傘鉾です。
祇園祭期間中に綾傘鉾がお会所とする「大原神社」の本殿蔵で、かつて縁起物として人々に親しまれた「宝舟絵」の版木が2種類発見されました。
この絵は、明治大正期に活躍した京都画壇の重鎮である日本画家「奥谷秋石(おくたにしゅうせき)」画伯の筆による木版画で、大原神社で縁起物として参拝者に頒布されていたものです。
当時盛んだった宝舟絵の風習を現代に甦らせるため、竹笹堂に摺りのご依頼いただき、木版画に携わるものとして、歴史ある文化の保存と継承の一端を担うこととなりました。
縁起良い初夢をもたらす「宝舟」 長い歴史に培われた日本文化の復活
「宝舟絵」は、室町時代頃に悪夢を流す厄払いとして登場しました。江戸時代には、お正月や節分の夜に枕の下に敷いて寝ると良い初夢を見ることができるとして、各地の神社で授けられるものや、「宝舟売」といった売り子が「おたからおたから」と声を上げて売り歩くものなどが広まり、お正月の風物詩として賑わいをもたらしていました。
発見された2枚の版木は、表裏両面に彫刻が施されたもので、非常に良好な状態で保存されていました。調査の結果、使用可能であることが判明し、500年にも及ぶ文化の再興と、町や神社の活性化のために木版画復刻が企画されました。
本年の祇園祭には、綾傘鉾お会所にて縁起物として各限定50部が販売されます。ぜひ風情ある佇まいの宝舟で吉夢を御覧ください。
名筆そのままに 吉夢をもたらす宝舟を職人技光る濃淡で表現する
毛筆の滑らかさを活かす
筆のかすれまでも緻密に再現された彫刻に、現代の職人による絶妙な力加減で摺りを施す。
濃淡で描かれる宝舟
墨で描かれる水墨画のような美しい濃淡を、木版画の技法「ぼかし」で表現する。
概要
内容 | 縁起物 宝舟絵 摺り |
所有者 | 大原神社 綾傘鉾保存会 |
作者 | 奥谷秋石 |
仕様 | 墨摺り・ぼかし2度摺り / 山桜材版木 |
制作期間 | 約1ヶ月 |
歴史ある神社に眠る貴重な版木 文化を物語る発見を新聞各社も報道
大原神社で発見された宝舟絵について、読売新聞、京都新聞で報道されました。
2015年6月23日 読売新聞朝刊 京都版
2015年6月23日 京都新聞朝刊
大原神社
1500年初頭に善長寺が開基された際に、鎮守社として立てられたことが起源。元は福知山にある大原神社の出張所。御祭神は伊弉册尊(イザナミノミコト)。
祇園祭の際には「綾傘鉾」のお会所になり、昔使用されていた鉾の貴重な装飾品などが展示され、賑わいをみせる。
綾傘鉾
祇園祭の山鉾巡行に並ぶ山鉾のなかでも、非常に古い形態を残している傘鉾の一つで、大きな傘と棒振り囃子の行列として巡行していたが、元治元年の大火でその大部分を焼失する。昭和54年に消失前の行列を再興し、巡行に復活した。傘につける垂り(さがり)は人間国宝の染織家森口華弘の友禅「四季の花」と平成4年に町在有志の寄贈による綴錦「飛天の図」がある。
日本画家 奥谷秋石
明治から昭和初期にかけて活躍した日本画家。森寛斎のもとで円山派の画風を学び、山水画を得意とする。
数多くの賞を受賞し、自身の画塾を開くなどして後進を育て、京都画壇の重鎮として活躍した。